こんにちは、理学研究科化学専攻出身のるびこです。
たまたま、TVを見ていたら富士フイルムのCMで「ディープ紫外線」で日焼けする、という話をしていました。
「ディープ紫外線」という言い回しに疑問を感じたので検証してみます。
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昔から富士フイルムの白衣を着た人が出てくるCMが好きでした。
自分が白衣を着るようになって人の役に立つ研究の難しさも分かり、より一層富士フイルムのCMに登場する研究員を尊敬しました。
そもそも理学部ではそれが難しいというのもあるのですが、、、
【就活目線】理学部と工学部・薬学部・農学部の違い【学部選び】 – ぐうの音
僕が探した限り、一番科学的に解説してあるのがこのニュースリリースです。
世界初!紫外線最長波領域「Deep UVA」(波長370~400nm)を効果的にカット 紫外線防御剤「D-UVガード」新開発 : ニュースリリース | 富士フイルム
そもそも紫外線ってなに?
紫外線は光の一種ということはご存知かと思います。
そして、光には色があるということも誰も疑う人はいないと思います。
じゃあ、色って何なんでしょうか?
色の見える原理や紫外線のこともよく知っているという方は飛ばしてください。
紫外線の前に、色について考える
光には波の性質があります。この説明には物理学の知識が必要なので、そういうものだと思って続きを聞いてください。
波には「波長」という指標が存在します。波の間隔のことですね。
波と波の間隔が狭い → 波長が短い
波と波の間隔が広い → 波長が長い
これもイメージしていただけると思います。
では、波長が異なるとどうなるのか
- 波長が短すぎると見えません
- 波長が長すぎても見えません
- ちょうどいい波長域では、人間の目は波長の違いを色の違いとして認識します
具体的には400~800 nmの光を人間の目は捉えることができます。
- 450 nmくらいは青紫
- 550 nmくらいは緑
- 650 nmくらいは赤
に見えます。そしてその外側、
- 400 nm以下の見えない光を紫外線
- 800 nm以上の見えない光を赤外線
というふうに呼んでいます。その紫外線が日焼けのもとになるんですね。
ちなみに、メガネやサングラスに書いてある「UV400」と言うのは「400 nm以下の光、つまり紫外線をカットします。」という意味です。
400 nm以下の光をカットしてもメガネが透明なのは、そもそも人間が感知できない光を遮っているからなんですね。(すこしハイレゾと似てるような気がしました、僕だけでしょうか)
なんで紫外線で日焼けするの?
ここからはもう少し難しい話になります。
光はエネルギーを持っています。そして、波長が短ければ短いほど大きなエネルギーを持っています。
すごく噛み砕いて説明すると、
- 赤外線程度の小さなエネルギーはものを暖めます。こたつが温かいのは赤外線を出しているからです。また、電子レンジは食べ物の中の水分子だけを温める光を出しています(目に見えない光なので明るくは見えません)。
- 紫外線のような大きなエネルギーは細胞にダメージを与えます。エネルギーが大きすぎて温かくなるどころでは済まないのですね(正確には紫外線で物体の温度は上昇しません)。
細胞がダメージをうけて「メラニン」という黒い色素を分泌するため、日焼けするというわけです。
じゃあ、ディープ紫外線って?
ディープ紫外線(Deep UVA)とは
UVA波の中でも最も肌の奥深くまで入り込むのが「Deep UVA」 富士フイルムは、このUVA波の中でも 最も波長が長いものを「Deep UVA」と名付けました。 波長が長いため、室内にいても窓ガラス越しに 入り込む強さを持つのがDeep UVA。 もちろん、人の肌でも奥深くまで到達して、 ダメージを引き起こします。
http://shop-healthcare.fujifilm.jp/sp/deepuva/?_ga=1.66511276.36680276.1469878682
ディープ紫外線と聞くと、特殊で危険な紫外線だと感じてしまいますよね?
しかし、実はなんのこともない「紫外線の中でも波長が長いもの」のことなんです。察しのいい人はお気づきかと思いますが、最もエネルギーが弱い、つまり人体に影響が小さい紫外線のことなんです。
エネルギーが弱ければ人体に影響が小さい、というのもいささか安直すぎる気がするので、根拠を追加しておきます。光は吸収されてはじめて作用します。しかし、なかなか吸収されないから肌の奥まで到達するのです。
つまりディープ紫外線とは、一番やさしい紫外線のことだと思ってもらって間違いありません。
結局僕が伝えたいこと
僕が読んだ限りでは、富士フイルムのCMも冒頭で貼ったウエブサイトでも一切嘘は言っていません。肌の奥まで到達することも、地上に届く太陽光に多く含まれていることも、日焼けのもととなっていることも。
ただし、「一番やさしい紫外線」に対して、ややもすると危険に聞こえる「ディープ紫外線」と名前をつけたことに違和感を感じている、ということです。
僕はマーケティングなどには明るくないので、この命名が最適解なのかもしれません。
光化学を学んだ人からすると違和感を感じてしまいます、というお話でした。
最後に、一応調べてみたのですが、はじめに「ディープ紫外線」と呼んだのが誰なのかはわかりませんでした。富士フイルムさん、とんだとばっちりだったらごめんなさい。
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