僕は中望遠レンズが好きだ。これまでレンズ交換式カメラのマウントは2度乗り換えているが、どのマウントでも必ず85 mmの中望遠レンズは手に入れている。
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- XF56mm F1.2 Rのレビュー記事:XF56mm F1.2 Rレビュー!どのくらいボケるか計算してみた
そして今回購入したSIGMA fpでも中望遠枠を探した。Lマウントの85mm中望遠単焦点は以下の3つ。
- ライカ アポ・ズミクロンSL f2/75mm ASPH.
- ライカ アポ・ズミクロン f2/90mm ASPH.
- SIGMA 85mm F1.4 DG HSM |Art
Leicaはまず候補から外すとして、SIGMAは純正ではあるものの・・・一眼レフの光学系を転用したのものであまりに大きいし、なんだかなあ。ということで(本ブログを読んでいただいていれば既にお分かりかと思うが)、今回もオールドレンズで探すことにした。
SIGMA fpは軽量さを生かすためにオールドレンズはレンジファインダー用のものを集めている。そこで選んだのはCanonのLeiacスクリューマウントのレンズ・Canon Lens 85mm F1.9だ。
CanonのLレンズを初めて購入!
— るびこ@理系男子のぐうの音 (@ruvico_gunone) February 20, 2020
LはLuxuryの頭文字だけあって絞り羽が20枚も!
でもおかしいな、Lレンズは赤鉢巻があるって聞いたんだけれど・・・・#Canon #Canon85mmf19l #オールドレンズ #retrolens #SIGMAfp pic.twitter.com/12bVY9bVCe
- 加工精度の高い銀色の鏡等で存在感抜群
- 絞り羽根20枚と今では考えられない豪華仕様
- 開放でわずかににじみはあるものの芯のある描写
ロシアレンズとは全く異なるとても精巧な造り。レンズとしての性能はもちろん、工芸品として見ても面白いレンズだ。早速紹介していく。
> Serenar 85mm F1.9 I(CANON CAMERA MUSEUM)
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
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生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
当時の最高級レンズと思うと格安にすら感じる
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
Canon Lens 85mm F1.9の作例
まずは作例から紹介していく。役70年前のレンズでもこれほどの描写ができるのかと驚いた。
▲ヘリコイド付きアダプターを使用して最短撮影距離を超えての1枚。周辺にマゼンダ被りが発生している?背景も少しぐるぐる。
近接では描写は暴れるみたい。本来の設計を超えた使用ではあるので、仕方ないのかもしれない。
▲85mmといえばポートレート。ということで鳩のポートレートをば。こちらでは、背景がごちゃごちゃしているが前ボケ後ボケ共に自然な感じ。
最後に絞って撮影した1枚。近景はピシッと描かれており、遠景になるにつれて滑らかに像が緩んでいきとても気持ちいい。パイプの塗装の剥げてざらついた感じも伝わってくる。
まるで工芸品!なCanon Lens 85mm F1.9
中望遠らしく細長い銀色のレンズだ。先端側に絞りリング、根元側にフォーカスリングがある。
オールドレンズにはよくあることだが、フォーカスの指標が若干ずれている。フォーカスリングは適度なトルクが残っており、細かい調整も問題ない。まあこの辺は個体差があるので、可能であれば購入前に実物を確認するのが好ましい。
圧倒的な20枚の絞り羽根は動かすだけで恍惚
正直Canon Lens 85mm F1.9はあまり入手性もよくないし、特徴的な描写をするわけでもない。でもブログで紹介しようと思った理由はこの絞り羽根。
近年販売されているレンズは絞り羽根が9枚が一般的。高級レンズでも11枚だ。
それがおよそ倍の20枚なんだから、もう壮観。絞りリングに連動してぬるりと羽根が動いていく様は、いつまでも見ていられる。どこまで絞り込んでも円形で美しい。何がなんでも円形を保ちたいという、当時のCanonの設計者の情熱が感じられる。
SIGMA fpに装着してみる
本記事の本題でもある、SIGMA fpに装着した姿を紹介したい。
この、黒くシンプルなSIGMA fpにシルバーのレンズの組み合わせが映える。
かなり細長いレンズなので、SIGMA fpのコンパクトさはスポイルされてしまうが、口径を考えれば小型な方だろう。しかし樹脂は使用されておらず、金属製なのでかなり重い。
絞りリングやフォーカスリングはローレット加工がなされており、指への吸いつきはかなりよい。ただしフォーカスを回すとピントリングも追従してしまうのはご愛嬌だ。フォーカシングの前に絞りは決めておこう。
このアングルからだと長さが際立つ。重心はかなり前になるので、アンバランスだし、アダプタのヘリコイドも操作性が悪い点は注意しておきたい。
なおフィルター系は48 mmとかなりレア。レンズキャップは49 mmのものが使えるので困ることはないけれど。ちなみに僕は48 mm→49 mmのステップアップリングにいつもの八仙堂のかぶせ式レンズキャップを使用している。
本当ならステップアップリングも銀色が良かったが、そもそもマニアックな径なので見つけることができなかった。
シルバーのオールドレンズは全て八仙堂のカブセ式レンズキャップで揃えている。ステップアップリング着用状態だと上記の50〜51 mmのものがぴったりだが、ステップアップリングを使わないのならもう1サイズ小さくてもいいかもしれない。
今日のぐうの音
Canon Lens 85mm F1.9はとても素直な描写で頼もしいレンズだ。コンピュータもない時代にこのレンズを作り出した光学設計者は素晴らしい。2度目になるが造りが精巧で現在でも問題なく使用できるのも驚きだ。
一眼レフが主流になるよりもさらに前のレンズが、一眼レフからミラーレスに移り変わろうとしている時代に再び手にとられ、使用されると思うと感慨深い。
レンジファインダーだとブライトフレームの都合から85 mmはほとんど見つからない(90 mmはたくさんある)ので、レンジファインダー用のレンズで85mmを探すなら十分にお勧めできる。中古市場でもあまり見かけないレンズではあるが、気になった方は探してみてほしい。
> Serenar 85mm F1.9 I(CANON CAMERA MUSEUM)