プログラマーのためのキーボードといえばHappy Hacking Keyboard(HHKB)というのがある種常識でした。しかし2016年ころ、自作キーボードの文化が日本でも広まり始めました(海外では昔からポピュラー)。とは言っても一部の人が海外の共同購入サイトで手配する程度でした。それも徐々に増え始め、2018年には日本国内での流通も増えて一気に身近なものになりました。
そう、自作キーボードは特別な一部の詳しい人だけのモノではなくなったのです。
HHKBユーザーだった僕も2019年に自作キーボードに挑戦しました。その経験を踏まえて、HHKBと自作キーボード、それぞれのメリット・デメリットを比較してみます。
- 今HHKBを使っている人
- 自作キーボードに興味がある人
- HHKBを買おうか迷っている人
こんな人に読んで欲しい記事です。
やっぱりスイッチの完成度としてはやはりHHKBが上
HHKBと自作キーボードではキースイッチが異なります。
- HHKB:静電容量無接点方式
- 自作キーボード:ほとんどはメカニカル
この点だけ比べれば、やはりHHKBの静電容量無接点方式がより優れているというのが中立な判断でしょう。
詳しく解説していきます。
長く使えるのは静電容量無接点方式(HHKB)
静電容量無接点方式の耐久性は無敵です。だって1000万回以上の耐久性があるんですから。
静電容量無接点方式は名前の通りスイッチに物理的な接点を持ちません。そのため摩耗などによる劣化が起きないんですね。これは物理的なスイッチを持っているメカニカルキーボード(その他諸々)と大きく違うところ。
ちなみに光学式というスイッチもあるみたいです。これも物理的な接点がないんだとか。使ってみたい。
静電容量無接点方式(静電容量無接点方式)は原理的にチャタリングが起こらない
チャタリングとは「1回押したはずなのに2回入力された」みたいな現象のことです。これはスイッチの接点が接触状態のときに細かい振動などによりON→OFF→ONと切り替わってしまうことで起きてしまいます。
これはスイッチの劣化などによって起きてしまうのですが、前述の通り物理的な接点を持たないHHKBの静電容量無接点方式ならそもそも起きません。
この点に関しては純粋に静電容量無接点方式が勝っていると言えます。
メカニカルスイッチも案外奥が深い
ここまで読むと「静電容量無接点方式こそ至高のスイッチなの?」と思われてしまいそうです。
しかし静電容量無接点方式は
- 構造が複雑過ぎてコストが割高
- 生産できるメーカーが少ない(国内では東プレのみ)
と言ったデメリットもあります。
そして使ってみて初めて気づいたのですが、メカニカルにはメカニカルならではの良さがあったんです。
それは選ぶ楽しさ。メカニカルの打鍵感は大きく3種類に分けられます。
- リニア(赤軸):底打ちまで荷重が変わらない。ストンと落ちる感じ
- クリッキー(青軸):底打ちの時にカチッというクリック感がある。音が大きく、いわゆるメカニカルという感じ
- タクタイル(茶軸):途中で荷重が変わり、押した感覚がわかりやすい。スゥ…コトンという感じ
代表的なのはこの3つです。他にもリニアで荷重が重い黒軸とか、色々あります。沼です。
そこから好きなものを選べるってメカニカルならでは。軸のことを考えるだけでも白米3杯は食べられます。
ちなみに静電容量無接点方式っぽい打鍵感は個人的には茶軸が近いかと。
2022年9月追記
自作キーボードの活動が「ミニマリストの片付け」というサイト運営様の目に留まり、自作キーボードの記事を寄稿させていただいた。ぜひ併せて読んでいただきたい。
ミニマルな「自作キーボード」を作るに至った話【デスクをすっきりさせるために】-ミニマリストの片付け
自作キーボードはHHKBよりキーボードが人に歩み寄ってくれる
HHKBはキーボードの到達点のひとつ。それは間違いありません。
ただ一つの側面として、HHKBには決して乗り越えることができない壁があると僕は思います。それは入力デバイス環境最適化の方法です。
- HHKB:最終的には各人がキーボードに最適化していくしかない
- 自作キーボード:キーボード側を各人に最適化することができる
自作ならあらゆることが思いのまま。スイッチも選べるし、キーキャップも選択肢がHHKBよりも広がります。そしてなによりキーマッピングを自分専用にカスタマイズできるんです。
一度触るとパラダイム転換が起きます。もしあなたのHHKBに「ほとんど押されないキー」が一つでもあるのなら、自作を検討する価値は確実にあります。
逆に「静電容量無接点方式」は自作キーボードには絶対に乗り越えられない壁ですね。
今日のぐうの音:HHKBが好きなら自作キーボードにも挑戦すべし
あなたがHHKB好きなら、きっと下記のどちらか、もしくは両方にも当てはまるでしょう(打鍵感最高というのは言わずもがななので省いてます)。
- ホームポジションから手を動かさずに全てのキーに届く、まるでキーボードが体の一部になったかのような感覚が好き
- 矢印キーすらない、スパルタンなキー配列(あるいはそれを使いこなす自分)が好き
どちらにも当てはまらないなら、Realforceを使っているはずですから。
上記の2点は自作キーボードならより突き詰めることができます。やっぱり合わなければHHKBに寄せることも思いのまま。
ぜひ自作キーボードの深い深い沼に足を踏み入れてはいかがでしょうか?
https://www.gu-none.com/ergo42-towel-assy
こうやって並べられるくらいキーボードを買い漁るようになるなんて思ってませんでした。
自作キーボードErgo42 towel
最終的にたどり着いた自作キーボード。何もかもが自分の思い通りになって最高です。あなたが今使っているキーボードで、押したことのないキーが一つでもあるなら自作キーボードを検討するべき!
> 自作キーボードErgo42 towel1ヶ月使用レビュー|左右分離・格子配列には慣れるのか
静電容量無接点方式のHHKB Professional BT 墨
市販品では最高のキーボード。
静電容量無接点方式という癖になる打鍵感を持つ魔のキーボード。これを一度使うと普通のキーボードでは満足できない体になってしまいます。
> 【HHKB Pro BT購入レビュー】高いけど買ってよかった!他のキーボードは使えなくなる打ち心地
タイプライター風のAZIO Retro Classic
こだわりが詰まったキーボードを初めて触ったのがコレ。
僕をキーボード沼に引き込んだ張本人です。本物の木が使われていて見た目だけでなく触った感触もレトロ感満載のキーボード。でかくて重いところも抜群の安定感の秘訣。
> 打つのが楽しくなるキーボードAzio Retro Classic Bluetoothの魅力をなんとか文字にしてみました
Apple純正Magic Keyboard
Macで使うなら一度は検討するべきキーボード。iPadには専用のキーボードも純正・サードパーティ問わず多くリリースされていますが、実はiPadで使うなら最もバランスが良いのがこのMagic Keyboardだったりします。
> 【レビュー】iPadで使うためにMagic keyboard購入!これは最早ラップトップ!?
はじめまして。
自作キーボードの記事、興味深く拝見しました。
自作キーボードに興味があるのですが居住地が広島で秋葉原に気軽に行くことができない環境です。
そんな私でもネットで調べたり通販を利用することで自作をすることは可能でしょうか?
リスクは承知なので失敗することは問題ないのですが「地方住まいだと厳しそう」とかあればご教示いただければ幸いです。
自作の適正についてはPCの自作や、ロードバイクをバラでパーツを購入して組み立てたり等するので不向きではないと控えめですが自己評価しております。
ergodoxを持っているのでキー配置をコンパイルして基盤に焼く?(適切な表現がわからないですが)等は問題ないと思います。
コメントありがとうございます。
結論から申し上げますと、通販とネット検索での自作は十分可能だと思います。
僕は秋葉原の遊舎工房の店舗で組み立てましたが、店舗で良かったと思う点は
の3点です。
1に関しては、使わないかも、と思うものも用意しておくと成功率を上げることができます。
2、3に関しては、そのキーボードの開発者さんのTwitterなどへ質問することで十分カバーできます。
早く完成させたいという気持ちを抑えて慎重になることさえできれば、ほぼ失敗はなくせるというのが持論です。
僕よりも工作経験が豊富なようですので、釈迦に説法な部分もあるかと恐縮ですが、少しでも参考になれば幸いです。
るびこ様
早速のご返信ありがとうございます。
決断のための最後の一押しが欲しかったのでありがたいアドバイスでした。
少しずつ準備をして遊舎工房さんの「ErgoDash」に挑戦してみようと思います。
今使っている「Ergodox EZ」は一番内側の親指以外が遠くて押しにくいのでずっと自作に憧れてたんです。
改めてありがとうございました。
ブログ頑張ってください、また見に来ます(^_^)
ErgoDashかっこいいですよね!ぜひ自作を楽しまれてください。
ありがとうございます。これからも更新していくので、お時間あるときに見に来ていただけるとうれしいです!