これまでで最も高価なレンズを購入したので、記事にして紹介しておきたい。AFも使えなければ、驚くほど明るいというわけではない、だけど高い単焦点を購入するなんて写真を始めた頃には想像もできなかった。
購入したレンズはタイトルにもある通りLeica Summicron-M 35mm F2 ASPH.だ。僕の現在所有するMマウントで唯一の非球面レンズとなる。
記事の前半に「どうして購入に至ったのか」、次に「どんなレンズか」、最後に作例という順番で紹介していく。
気に入ったポイント
- コンパクトでM型Leicaの機動力を活かせる
- フードがかっこいい
いまいちなポイント
- 描写は価格を考えれば普通、色のりがすごい
- 意外と目立つサジタルコマフレア
- 付属品が多く、揃っている中古を探すのは骨が折れる
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
---|---|
生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
高い、明るくない、寄れない、MFというコスパは完全無視のレンズ
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
購入した経緯
実は同スペックのVoigtlander Apo-Lanthar 35mm F2 Aspherical VMを以前所有していた。
レビュー>Voigtlander Apo-Lanthar 35mm F2 Aspherical VMレビュー|最強の万能レンズ
Apo-Lantharの写りには大変満足していた。でもLeica M10-Rとの外見の相性が気に入らなかった。それでも諸収差が少なく(=トリミング耐性が高く)、50cmまで寄れるという実用性の高さから手放すことができなかった。でもあることに気づいた。
「実用性を考えるならそもそもLeicaなんて使うか?」
カメラの見た目とか、質感とか、とにかく撮影体験を重視して僕はLeicaを手にしたんだった。一応断っておくと、Apo-Lantharの品質は決して悪くない、いやむしろ国産レンズではトップクラスだろう。
それにSummicronはサイズ感もいい。Apo-Lantharはレンジファインダー用レンズとしてはやや大柄だった。Summicron-M 35mm F2 ASPH.は非常にコンパクトだ。フードをするとやや長くなるが、それでも重心はカメラ本体寄りなので取り回しは良好そのもの。
そんなわけでApo-LantharからSummicronに買い替えた。
歴代のSummicron-M 35mm F2について
各世代の35mm Sumicronを簡単に説明するなら以下のような感じ。なお価格は2022年初頭の相場。
- 第1世代:伝説と言われる8枚玉。歴代Summicron 35mmで最も高価で50万円〜。
- 第2世代:いわゆる6枚玉。最も安価で20万円前半〜。
- 第3世代:7枚玉。最後の球面レンズで、小さい。20万円中盤〜?
- 第4世代:ここから非球面レンズ採用。5群7枚だが、7枚玉とは呼ばない。20万円後半〜。
- 第5世代:レンズ構成は第4世代と同じ。絞り羽根の枚数が増えて、レンズフードもねじ込み式になった。30万円〜。
僕の所有する個体は第5世代になる。
その後Apo-Summicron-M 35mm F2 ASPH.の販売が開始したが、Summicon-M 35mm F2 ASPH. 5thも併売しているのでどちらも現行モデルという扱いになる。
Summicon-M 35mm F2 ASPH. 5thはシルバーアルマイト
第5世代から鏡筒がシルバークロームからアルマイトに変更された。シルバークロームは50mmのSummicronを持っている。二つを並べて比べれば・・・という前提だが、高級感はシルバークロームが上だ。
50mmのレビューはこちら>Leicaの撒き餌レンズ!Summicron-M 50mm F2 4thレビュー
シルバークロームはレンズ全体が満遍なくずっしりしているのに対し、アルマイトは軽い。重さの偏りから中のガラス玉の位置が感じられる。
シルバークロームはわずかに青みがかった鈍い光沢が感じられるのに対し、アルマイトは無彩色でマットだ。所有感を優先するなら、あえてシルバークロームの第4世代を選ぶのもよいだろう。
とは言え、アルマイトも写真で見るよりはずっと高級感があった。
付属品が多いのが難点といえば難点かもしれない。中古で購入時はよく確認してほしい。
- レンズフード
- レンズフード用キャップ
- 金属キャップ
- 化粧リング
フードと化粧リングは排他的になっている。化粧リングに機能はないが、フードを使わないときの見た目が良くなる。
これが現代のLeicaか、と思わせる描写
一言で言えば普通だ。
収差で包み込んで幻想的にすることも、圧倒的なボケ量で視線誘導することもできない。普通にありのままを写す。描写を貶しているわけではない。そもそも目で見たまま写すというのは相当な技術だ。言うは易し行うは難しの典型である。
誤解を恐れず言えば、スマートフォン的な描写と表現してもいい。こってりと色が乗り、コントラストもはっきり出る。よく言えば開放から安定した描写で、悪く言えば絞り値による描写の変化は楽しめない。
描写のクセに頼れない分、撮影者の実力がそのまま出る。怖いレンズでもある。
オールドレンズの描写がどうだ、と語るには現代のレンズの描写も知っておかなくてはなるまい。オールドレンズ好きにもリファレンスとして持っておいて欲しいレンズだ。
Leica M10-Rで撮影した作例を紹介する。
カメラのレビューはこちら>Leica M10-Rレビュー|レンジファインダーと高画素機の意外な相性
レンジファインダーでも頑張ればこういうの撮れる。最短70cmにフォーカスを合わせて身体を反らせてライブビューで撮りました。
めちゃくちゃ色乗りがよろしいようで。
窓がちょうど枠取りの構図になっていたのでシャッターを切った。雨のしっとりした質感が伝わる。
その後雨が上がって、神々しい感じで撮れた。フレアなのか薄明光線なのか分からない、けれど僅かにゴーストが出ているのはわかる。
サジタルコマフレアがわかりやすいのが上の作例。周辺の光源が同心円状に伸びている。アンダーめに撮った時の色乗りが何とも渋い。
レンズ構成をみると、確かにダブルガウスの1枚めを反転させて、後玉に凹レンズを追加したようにも見える。ダブルガウスの発展型だとすれば、サジタルコマが出てしまうのも頷ける。
ここからはフィルムの作例。ボディはLeica M2、フィルムはLomography BERLIN 400だ。
明暗差があって、露出は結構悩んだ思い出。これは露出計を搭載したカメラであっても同じだろう。
今日のぐうの音
Summicron-M 35mm F2 ASPH.の写りを「普通」と評した。オールドレンズやMS-Opticsの豊かな個性を本当の意味で楽しむためには「普通」を知っておかなければならないと僕は考えている。
35mmという焦点距離は記録としても使えるし、トリミングして標準レンズとしても使える。描写はもちろん画角を考えても使い勝手は抜群なのだ。
その小ささもあり、どのレンズを持ち出すか困ったときは最終的にこのレンズを選ぶことが多い。
万が一個性的な描写に飽きてしまい、癖玉達を手放すことがあったとしても、最後にはこのSummicron-M 35mm F2 ASPH.を残すだろう。そんな風に思わせてくれるレンズだ。
こうやって並べられるくらいキーボードを買い漁るようになるなんて思ってませんでした。
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