SIGMA fpはフルサイズで最小という強烈なインパクトがある代わりに様々な機能が省略されている。その一つがメカシャッターだ。
SIGMA fp、分かってはいたけれどメカシャッターがないのが地味にストレス
— るびこ@理系男子のぐうの音 (@ruvico_gunone) March 2, 2020
・ローリング歪み
・フリッカー
・ストロボ同調速度が1/30
EVFは無くても気にしないので、上記以外は本当に快適!
ただし用途は選ぶなー、というのは拭えない#sigmafp #シグマ #sigma pic.twitter.com/MNjVpyjST7
SIGMA fpにはメカシャッターが搭載されておらず、電子シャッターで写真を撮ることになる。電子シャッターだと以下の3つの問題が発生しやすい。
- ローリングシャッター歪み
- フリッカー
- ストロボ同調速度の遅さ
ローリングシャッター、フリッカー、ストロボ同調速度に対し僕がどう対応しているか本記事にまとめておく。
メカシャッターと電子シャッターの違い
まずは簡単にメカシャッターと電子シャッターの違いについて説明しておく。メカシャッターには他にレンズシャッターとかもあるんだけれど、ややこしくなるので省略する。
メカシャッターは撮像素子前を幕が移動する
メカシャッターは撮像素子(デジカメならイメージセンサー)の前を2枚のシャッター幕(先幕・後幕)が一定の速さで動き、その隙間の大きさでシャッタースピードをコントロールする。フォーカルプレーンシャッターという仕組みだ。
例えばシャッタースピードが1秒なら、先幕が降りてセンサーに光が当たるようになり、その1秒後に後幕が降りて露光が終了する。これはわかりやすい。シャッター幕の移動するスピードである1/250秒くらいまではこんな感じ。
じゃあ1/1000秒のような高速シャッターではどうなのか、というと少しややこしくなる。シャッター幕自体のスピードを考える必要があるからだ。先幕と後幕がほぼ同時に(実際には1/1000秒の間隔を空けて)動き出す。センサーの前をわずかな隙間が移動し、それぞれの画素が1/1000秒だけ露光するという仕組みだ。
余談だが、ミラーレスカメラで鳴るシャッター音はシャッター幕が移動する音だ。一眼レフなら加えてミラーが動く音もする。
電子シャッターは電気的に露光時間を制御する
電子シャッターはシャッター幕を使わず、電気的に露光時間を制御する。電子シャッターには以下のようなメリットがある。
- メカシャッターよりさらに高速なシャッタースピードに設定できる
- 物理的な幕の移動がないため、無音で撮影できる
- (電子シャッターのみにすれば)シャッターユニットが不要になるため小型に設計できる
一方でデメリットとしては読出し速度が遅いことが挙げられる。
センサーの各画素に溜まった電荷を露光終了後直ちに読み出す必要がある。現在主流のCMOSセンサーの特性として、上から1行ごとに読み出していき、その行の読出しが終わって初めて次の行の露光を始めることができる。
上から順に露光していくという意味ではメカシャッターと同じフォーカルプレーンシャッターだ。しかしメカシャッターの幕速度は1/250秒と高速なのに対し、電子シャッターは上から下まで読み出すのに1/30秒ほどもかかってしまう点が異なる。
ストロボ同調速度から推測するに、SIGMA fpの読み出し速度は以下の通り
- 14bit RAW:1/15秒
- 12bit RAW/JPEG:1/30秒
つまりどんなにシャッタースピードを速くしても(確かに各画素の露光時間は短くなるが)1枚の画像の中で上と下では1/30秒ほどの時差が生じてしまうということだ。
電子シャッターの問題は読み出し速度が遅いこと
冒頭でもお話しした通り、電子シャッターによって生じる問題は以下の3つ。
- ローリングシャッター歪み
- フリッカー
- ストロボ同調速度の遅さ
電子シャッターのみで起こる現象ではなく、どれもメカシャッターでも起こるが、実用上問題にならないだけということにも留意したい。
ローリングシャッター歪み問題
ローリングシャッター歪みとは動く被写体が歪んで写ってしまう現象。正直なところ、対処法はない。素早く動く被写体は大きく撮らないか、ローリングシャッターによる歪みが発生してしまうことを諦める他ない。
フリッカー問題:一応解決策あり
電灯は基本的に交流電源を使用しているので、実は素早く明滅を繰り返している。電子シャッターの読み出し速度が遅いため、読み出している間に明滅してしまい、1枚の写真の中で明暗の縞々ができてしまう現象だ。
シャッターの読み出し速度が1/30秒と明滅のサイクルよりも遅いため、どんなにシャッタースピードを速くしても読み出し中に1枚の写真の中で明暗の反転が起きてしまう。
ならば逆に1行の間に明暗の反転が済んでしまうくらいシャッター速度を遅くすれば良いのだ。日本の交流電源は50〜60Hzなので、1/50〜1/60くらいシャッタースピードを稼げればフリッカーの影響はほぼ無視できる。一応の解決策はこんな感じだ。
ただしそんなにシャッターを開けていると手振れはもちろん被写体ブレが発生してしまうので、子供などの写真を撮るのには力不足だろう。無理やり解決するのならストロボを焚いて、シャッタースピードは遅くても露光の瞬間を一瞬にしてしまえばよい。
ストロボ同調速度の遅さ
よくよく考えてみれば当たり前のことだが、ストロボが発光しているその一瞬は全ての画素が露光状態でないと意味がない。例えばストロボが発光した瞬間、上半分の画素は露光状態で下半分の画素の露光が始まっていなければ、下半分は暗い画像が記録される。前項のフリッカーと似ている。
SIGMA fpの場合は全画素読み出しにかかる時間は1/30秒くらい。つまりそれ以上シャッタースピードが遅くて初めて全ての画素が同時に露光状態になる。これがストロボ同調速度だ。
もし逆に、ストロボの発光時間が1/30秒よりも長ければ(つまり、読み出し中に発光し続けることができれば)シャッタースピードに関わらずストロボを使用することができる。これがハイスピードシンクロだ。
一般的なメカシャッターならシャッターの幕速度は1/250〜1/125秒なので、ストロボ同調速度もそのくらいだ。しかしメカシャッターをもたないSIGMA fpでは全がその読み出し速度がストロボ同調速度1/30秒におよそ一致する。シャッタースピード1/30秒では日中シンクロはまず不可能だろう。
解決方法は2つある。
- LEDのようなフラッシュ光ではない光源を使う
- ハイスピードシンクロ対応の純正ストロボEF-630(for SIGMA)を使う
②の方が素直な解決方法だがSIGMAの接点がマイナーすぎて、安価なサードパーティ製ストロボでハイスピードシンクロに対応したストロボがない。これには閉口した。
今日のぐうの音:暗い室内で使い物にならない
要は「動きもの」、「人工照明下」、「ストロボ撮影」で困ることになる、ということだ。屋外のスナップ用途であればまず困ることはなさそう。しかしSIGMA fpの購入前には必ず知っておきたい情報だ。
実際のところ、どう運用しているかというと・・・1/50〜1/100秒のシャッタースピードで撮れる写真だけ撮っている。それか諦めて別のカメラ使うか。
早くグローバルシャッター(全画素同時読み出し)が一般に実用化されて欲しい。そうすれば全て解決するのに。それかCCDに逆戻りするか?
[…] と強がってはみたものの、メカシャッターは欲しかったなあ。というのが正直なところ。 […]