「またフルサイズが欲しい」
そう思わせてくれるミラーレスカメラがSIGMA fpだった。実際に店頭でSIGMA fpを触った時に直感的に「このカメラを使いたい」と思った。そう思った次の日にはポチっていた。
実際に使ってみると、まあ癖の強いカメラだった。使っていて困ることは多々あるが、それを使いこなしていく過程が楽しい。購入から1ヶ月以上経過してSIGMA fpのことがわかってきたのでレビューしようと思う。
- スナップ用途では全く不足ない実力
- センサーの解像感も高感度耐性も素晴らしい
- 小型オールドレンズでコンデジになる
- 室内ではほぼ役に立たない(理由は後述)
上記の内容に加えて、僕のカメラ遍歴からレビューしていく。
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
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生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
フルサイズセンサーでこの価格は驚きの安さ!だけれど万人にはおすすめできない
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
僕のカメラ遍歴
僕の愛用するカメラはFUJIFILM X-Pro2だった。それ以前はSONY α7IIを使っていた。SONY α7IIからFUJIFILM X-Pro2に買い替えた理由は、以下の3つ。
- X-Pro2のデザインが好き
- 軍幹部のEVFがないため携行性に優れる
- APS-Cレンズの小ささが魅力的
センサーサイズを犠牲にしてでも、システムを小型・軽量化したかったのだ。その目論見は大成功で、X-Trans CMOSセンサーの高感度耐性もXFレンズが作るボケ量も僕にとって全く不足がなかった。
じゃあなぜFUJIFILM X-Pro2を手放すことにしたのか。またオールドレンズを使いたくなったから、に他ならない。
オールドレンズの面白さ・個性はイメージサークルの周辺部に現れやすい。したがってそこまで余すことなく使うことのできるフルサイズのイメージセンサーは魅力的だ。やや乱暴な言い方になるが、オールドレンズを使うならフルサイズ、とまで思っている節がある。
SIGMA fp の衝撃
FUJIFILMの XFレンズもめぼしいものは試したし、なにかおもしろいレンズはないかなあ・・・と思っていた時にSIGMA fpを家電量販店で触ったら衝撃を受けた。なんとX-Pro2より小さいのである。
FUJIFILM X-Pro2(上)とSIGMA fp(下)
カメラボディがいくら小さくてもフルサイズ対応のレンズはどうしても大きくなり、カメラシステムとしては結局大掛かりになってしまう。というのがSONY α7IIから得た教訓だった。それから数年経ち、僕もカメラやレンズについて詳しくなった。「レンジファインダーカメラ用レンズ」というものがあるらしい。バックフォーカスを短くできることやAF用のモーターを積まないことで、口径の割に小さく設計できる。
これだ、と思った。SIGMA fpにレンジファインダーカメラ用のオールドレンズを使いたい!
その日からSIGMA fpの価格やレビューを漁ったことは想像に難くないと思う。この段階での調べ物はすでに「今買って良い理由を探す」フェーズに来ていた。
- 発売から数ヶ月経って価格も落ち着いてきたとか
- Xマウントに思い残すことはないだとか
- 早く買わないと物価上昇でオールドレンズ購入が不利になるだとか
上記のようなおよそこじつけに近い理由をつけて、ついにSIGMA fpを購入した。今思い返すと全く呆れたものだ。
SIGMA fpの作例
まだ買ってから間もないが、作例を載せておく。参考になれば幸いだ。
▲ここまではSIGMA 45mm F2.8 DG DN Contemporaryで撮影したもの。以降はオールドレンズでの作例。
SIGMA fpレビュー
さっそく本題に入る。僕はSIGMA fpのSigma 45mm f2.8 DG DN Contemporaryレンズキットを購入した。全ての機能を把握するためや、防塵防滴が必要な場面のために純正レンズは1本くらい持っておいたほうが良い、というのが持論だ。
ミニマルな外観、まるで黒い箱
レンズ交換式カメラには珍しく、凹凸が少ないデザイン(そういう意味でX-Pro2と似通っており、僕の大好きな形だ)。まるで黒い箱、塊感がすごい。これでフルサイズカメラというのだから驚きだ。
持ってみるとずっしりと重く、「ああ、確かにフルサイズセンサーが入っているのか」と納得する。
ちなみに付属品はこんな感じ
最近のカメラらしくバッテリーチャージャーがないのが、「なんだかなあ」と思う
あくまでプロ用途を想定しているのが伺える
ハイエンドカメラを使っていた人からすると、物足りないかもしれない
現代のカメラにあるべき機能が、ない
たとえローエンドモデルであっても、2019年発売の他のカメラなら搭載されている機能が省かれている。具体的には以下の通り
- EVF
- チルトやバリアングル液晶
- メカシャッター
- Wi-Fi転送・スマホ連携
- ホットシュー(外付けなら有)
- 内蔵ストロボ(ハイエンドだと省略されていることが多い)
なので普通のカメラのつもりで購入すると「こんなはずじゃなかった」ってなる。どれもあるに越したことはない。しかしこれらを載せると小ささがスポイルされてしまうなら、個人的には無くても困らない。
と強がってはみたものの、メカシャッターは欲しかったなあ。というのが正直なところ。
> SIGMA fpで一番困るのは電子シャッターしかないという点だ
SIGMA fp、分かってはいたけれどメカシャッターがないのが地味にストレス
— るびこ@理系男子のぐうの音 (@ruvico_gunone) March 2, 2020
・ローリング歪み
・フリッカー
・ストロボ同調速度が1/30
EVFは無くても気にしないので、上記以外は本当に快適!
ただし用途は選ぶなー、というのは拭えない#sigmafp #シグマ #sigma pic.twitter.com/MNjVpyjST7
SIGMA fpにEVFやチルト液晶はいらない
EVFはなくてもあまり困らない。直射日光下で見えずらさはあるが、僕のようにメガネを着用しているとEVFでも見えにくい。ぴったりとファインダーに接眼できないからだ。
むしろ背面液晶の方が、アイレベルに拘らず自由な発想で撮影できるとさえ思っている。だからせめてチルト液晶はあっても良かったけれど・・・まあ歴史的に液晶が動かない方が名機が多いから。
SIGMA fpにWi-Fi転送はいらない
これまた個人的な意見だが、僕はあまりスマホへの画像データ転送を使わない。理由はデータ管理が煩雑になるからだ。
スマホにもパソコンにも同じ(あるいは圧縮率の異なる)JPEGがあって、どちらもGoogleフォトにアップロードされるとどうしていいかわからなくなってしまう。
というわけで僕は使わない機能だから、なくても今のところ困っていない。
ホットシューは実は欲しかった
SIGMA fp本体にはホットシューがない。付属のホットシューユニットHU-11を装着する必要がある。それにHU-11をつけると横に伸びてしまうのがなんだかなあ。
HU-11
SIGMA fpはストロボ同調速度が1/30秒と遅いので使い勝手は悪いのだけれど、ストロボは積極的に使っていきたい。
ドレスアップアイテムとして外付け光学ファインダーも使いたかったりする。それに(さっきはEVF要らないって言ったけれど)ホットシューに乗せられるEVFが発売されるかも、という夢もある。
SIGMA fp + HU-11
欲を言えばボディ内手振れ補正が欲しかった
もしSIGMA fpに何か一つだけ機能を追加できるとしたら、迷わずボディ内手ぶれ補正を選ぶ。理由は2つある。
- 手振れ補正のないオールドレンズを使用するから
- 動画撮影時に手ぶれ補正は必須だろうから
もちろん動画、静止画ともに電子式手ぶれ補正はできる。しかし当然ながらRAW撮影時には使えない。静止画は基本的にRAWで撮影するので、手ぶれ補正は使用していない。動画はCinemaDNGを使いこなす力量がないので、電子式手ぶれ補正を利用してる。
しかし、僕は電子式手ぶれ補正の仕様も不満に感じている。電子接点がないレンズでは電子式手振れ補正が使えないのだ。Scalable(変幻自在の拡張性)を開発コンセプトに挙げている以上、いくらSIGMAがレンズメーカーとはいえ、社外レンズの使用も想定して然るべきだろう。たとえ電子接点がないレンズでも、設定から焦点距離を登録して電子式手ぶれ補正を使えるようにファームウエアアップデートしてほしい。
SONYのαシリーズは焦点距離を登録してボディ内手振れ補正を適用できる。オールドレンズで遊んでくださいと言わんばかりの親切設計だ。
SIGMA fpの良いところ
実際に使ってみて感じたSIGMA fpの良いとことは以下の3つ。
- フルサイズセンサー搭載なのに小型軽量
- 解像感も高く、高感度耐性も強いセンサー
- オールドレンズ運用も及第点
フルサイズセンサー搭載なのに小型軽量
やはり、まず最初に目につくのは筐体の小ささだろう。小さいレンズさえつけておけば、まるでコンデジのように扱える。これでフルサイズセンサーを積んでいるのだから驚きだ。
僕が好きなのが軍幹部。ファインダーの出っ張りがないのでカバンへの収まりが段違いに良い。本当によくこのサイズに収めてくれた、という感じ。
大きなカメラと違って、周りに威圧感を与えないのも良い。スナップを撮ろうと大きなカメラを構えていると親切な通行人の方は邪魔しないようにと足を止めてくれたりする。申し訳ないし、これでは「写真に撮られるために気を遣われた街」になってしまう。
SIGMA fpのような小さなカメラなら、その街に溶け込んでありのままの景色を収められる。だからといって盗撮はしないように。
解像感も高く、高感度耐性も強いセンサー
SIGAMA 45mm F2.8 DG DN Contemporaryとの組み合わせで、かなりカリッとした写真を吐き出す。FOVEONは使ったことがないのだけれど、FOVEONユーザーが違和感なく使えるようにチューニングされているのかなあ、と感じた。
比較対象がSONY α7IIで申し訳ないが、SIGMA fpの高感度耐性の高さに驚いた。さすがは裏面照射。SONY α7IIはISO6400も使いたくなかったが、SIGMA fpならISO12800くらいまでならギリギリ使える。ちなみに上の写真はISO20000だ。
SIGMA fpの軽さを活かすために小口径のオールドレンズを使うことも多いので、高感度耐性の高さは素直に嬉しい。手ぶれ補正も付いていないのでなおさら。
オールドレンズ運用も及第点
僕はオールドレンズをメインで使っている。先述のSONY α7シリーズはまさにオールドレンズに最適のボディと言える。一方でSIGMA fpは最適とは言えないものの、困らずに運用はできる。
まずはセンサーが裏面照射というポイントだ。難しい話は省くがセンサーの層の中で実際に光を受ける層がセンサー表面に近いため、センサーに対し斜めに入射した光もうまく捉えることができる(と言ってもフィルムほどではないが)。結果的にバックフォーカス(レンズ後玉からセンサーまでの距離)の短いレンズでも周辺減光や色被りが発生しにくくなるというメリットがある。
もう一つがMFのしやすさだ。サブ電子ダイヤルの中央のボタンを押すとフォーカス部がPinPで拡大表示できる。PinPなら全体の構図にも気を使えるので都合がいい。そして嬉しいことにシャッターボタン半押しで拡大表示は一時停止する。中央でフォーカスを合わせてシャッターボタン半押しで構図を合わせてシャッターを切る、この一連の流れが自然にできるのが心地いい。
この辺の話は「オールドレンズの母艦としてのSIGMA fpを考える」という記事で詳しく解説している。
まだLマウントボディ向けのマウントアダプターが充実していないことが難点だが、Leica Mマウントを経由して変換すれば、ほとんどの場合に対応できる。
SIGMA fpのイマイチなところ
もちろんイマイチなポイントもいくつかある。これが許容できればあなたの購入候補にもなるだろう。
- 電子シャッターのみだという点
- 純正パンケーキレンズが少ない
- 起動が遅い
電子シャッターについては先ほど紹介したリンクを読んで欲しい。それ以外のデメリット2点について解説していく。
純正パンケーキレンズが少ない
これだけ小さいSIGMA fpだ。当然レンズも小さいものを・・・と考えるのも至極当然。しかし、ちょうどいいレンズがない。2020年3月現在、キットレンズのSIGMA 45mm F2.8 DG DN Contemporaryしかない。これは由々しき事態だと思う。
Leicaの TL用レンズならパンケーキレンズがあるけれど、高価だしAPS-C用だしといまひとつピンとこない。
これからのSIGMAのContemporaryシリーズと、PanasonicのF1.8単焦点シリーズには大いに期待している。小型のレンズが揃ってくれば、SIGMA fpの評価もさらに見直されると思う。
DPReviwにSIGMA山木社長のインタビューが掲載されており、より小さなレンズを充実させる旨のコメントがあった。大いに期待したい。
> Sigma interview: Smaller, high-quality lenses coming ‘in the near future’
起動が遅い
これは素直にがっかり。スナップだからサッと起動してサッと撮りたいのに。起動してからSIGMAロゴが表示されて(かっこいいけれど)ワンテンポ待たされる。購入前に店頭で確認した方が良いかも。
電源を付けっ放しにしておくにも背面のサブ電子ダイヤルが軽すぎて、誤動作が怖くてできない。
ファームウェアアップデートで高速化しないかなあ。
SIGMA fpと共に買うべき周辺機器
SIGMA fpは本体とレンズだけで運用するのは少し辛い。買ってよかった、というかないと快適に使えないアイテムを2つ紹介する。
ハンドグリップHG-11は必須アイテム
どうしてこれを同梱しなかったのか不思議でならない。手で持って使うなら必須だろうに。
同梱していないことに憤りこそ覚えるが、ミニマルな外観と使い勝手を高い次元で両立している良い製品だと思う。
SIGMA fp+SIGMA 45mm F2.8 Contemporary + HG-11
ちなみにハンドグリップHG-11を使わないと、親指の付け根でもカメラの重さを支えることになり、MODEボタンの誤動作が起きやすくなる。
右下にあるMODEボタン、SIGMAロゴと逆の方が良かったのでは?
バッテリーチャージャーはあえてBC-51がおすすすめ
SIGMAのカメラを初めて使ったのだが、驚いたことに純正バッテリーBP-51が安い。なんとユーザー想いなメーカーなんだろうと感動した。
しかしバッテリーチャージャーBC-71の価格を見た時、その笑顔は消えた。高すぎる。これではその他諸々のカメラメーカーと同じではないか。
そんな僕のためにSIGMAは救いの手を用意してくれていた。純正のバッテリーチャージャーはBC-71だが、旧モデルであるBC-51でも充電可能なんだとか。そしてBC-51はこれまた安い。
他社なら純正バッテリー一つ買うのの半額くらいで、バッテリーとチャージャーを揃えることができた。チャージャーは本体充電よりも急速に充電できるし、何より充電中もカメラを使用できるようになる。絶対に手に入れておいた方がいいだろう。
今日のぐうの音
SIGMA fpは癖は強いが非常に良いカメラだ。かなり気に入っているし、Lマウントレンズラインナップが揃えばもっと評価されると思う。
ただし、SIGMA fpは誰でにもお勧めできるカメラではないと断言できる。「撮りたいものが決まっていないけれど、いいカメラが欲しい」という(SONY α7IIを購入した時の僕のような)ユーザーにはおすすめできない。確かにフルサイズセンサーのカメラの中では安く、さすがはSIGMAのコスパ、といったところだがストイック過ぎる。
逆に本記事の内容を理解して、自分の用途には足りる、と判断できるなら今すぐにでも購入をお勧めしたいカメラだ。
僕も不便を感じる場面がないわけではないが、そこはRICOH GRIIやCanon PowerShot G7Xなどと補い合いながら楽しんで使っている。
購入検討に際し、この記事が参考になれば幸いだ。なお、購入前には電子シャッターの問題点について言及している記事にも必ず目を通して欲しい。
> SIGMA fpで一番困るのは電子シャッターしかないという点だ
- 撮りたいものが決まっていないけれど、いいカメラが欲しい
- 安価にオールドレンズを始めたい!
という場合は、Canon EOS RPがおすすめだ。AFの使えるEFマウントのカメラが安く手に入るのでSONY α7シリーズよりも安価にレンズシステムを組むことができる強烈なメリットがある。
もし急に「YouTubeを始めたい!」と思い立っても、バリアングル液晶で自撮りもカンタン。
> SONY α7IIを手放した僕でもCanon EOS RPはたまらなく欲しい理由
[…] SIGMA fpのレビュー>SIGMA fp・レビュー|最強のフルサイズスナップシューター […]
[…] 「SIGMA fp・レビュー|最強のフルサイズスナップシューター」と言う記事でも話しているが、SIGMA fpのミニマルさに惹かれて手に入れたと言う経緯がある。僕の用途としてはあくまで軽快 […]
[…] SIGMA fpのレビュー記事を読んでもらえるとわかるが、そもそも僕はオールドレンズを使用するためにSIGMA fpを購入した。 […]
[…] ちなみに僕のメインカメラはSIGMA fpです。 […]
[…] 購入当初「SIGMA fp・レビュー|最強のフルサイズスナップシューター」というタイトルの記事を書いた。最強と称しているが、その気持ちに今も変わりはない。 […]