YouTubeで多くの人がこぞってレビューしていたSONY VLOGCAM ZV-1を購入してみた。が、イマイチ僕の用途とは合わず手放すことにした。
ZV-1それ自体は非常によいプロダクトだと思うし、新たな客層にリーチしたという意味でエポックメイキングなコンデジだとは思う。あくまで僕の用途では真価を発揮できなかったというだけだ。
僕がどのように使おうとしたかは記事の中で詳しく説明するので、もしあなたの用途と似通っていれば参考になるかもしれない。
いいところ
- ホットシュー
- バリアングル
- オートデュアル記録
- Log撮影できる
悪いところ
- 最短撮影距離
- SDカード内のフォルダ階層
- メニュー階層
- 光学手ブレ補正もいまいち
- 安っぽい樹脂外装、せめてレンズ鏡筒くらいは金属にして欲しい
- カスタムボタン少ない
- ワイド端24mm相当、テレ端70mm相当
- micro USB
タイトルでは「3つの理由」と書いているのに悪いところを8個も上げているじゃないか!とご指摘いただいた方、ありがとうございます。この8個の中でもとくに我慢ならなかった3つを詳しく解説している。
ワイド端24mmが狭いとか、今どきmicro USBとかは散々言われ尽くされている。だから他のレビュワーがあまり言及していないことを、この記事では論じていこうと思う。
ZV-1の第一印象は「便利だけれど楽しくなさそう」
ZV-1が発表されたとき、ブロガーやYouTube界隈では非常に大きな盛り上がりを見せていた。一方で僕のZV-1に対する感想は冷めていた。ボタンやダイヤルがあまりに少なく、マニュアル撮影は想定していない意匠だったからだ。便利そうだけれど、使っててつまらないだろうなあ、と。それこそスマホでいいじゃん。
だから発売されてカメラフリークスがレビューし始めたら「がっかりした」という内容であふれると信じて疑わなかった。
しかしその予想は裏切られることになる。蓋を開ければどのレビュアーもZV-1を絶賛しているのだ。もしZV-1の悪い点を紹介している動画や記事があったら教えてほしい。
(発売と同時に多数の有名レビュアーによる好意的なレビューをPR案件として出させておく
→ レビュアー界隈のZV-1に対するポジティブな雰囲気を作っておく
→ 後続レビュアーもなんとなくそれに従う
そんな気が今思えばしないでもない)
そんなこんなで「あれ?僕の勘違いで実はZV-1ってカメラ好きにとっても滅茶苦茶いいコンデジなのでは?」と考え始めるように。それで5年ほど使ったCanon PowerShot G7X(初代)からの買い替えとしてZV-1を購入してみた、というわけ。
SONY ZV-1はホットシューがついたコンデジとして貴重だな、と思っていて。
— るびこ@理系男子のぐうの音 (@ruvico_gunone) October 9, 2020
ウィンドスクリーンももちろんいいんだけれど、”ホット” シューなのでストロボ繋げば物撮りに便利!#vlogcam #zv1 pic.twitter.com/tsTq2J1c8Q
サクッと動画撮れそうなのも魅力的だし、何よりホットシュー搭載コンデジだから物撮りに役立ちそうだなと考えた。
確かにZV-1はエポックメイキングなカメラだ
ZV-1は機能的には別段新しくもなんともないものばかり。しかしその機能をコンデジに搭載していたり、カメラの仕組みを知らなくても機能を使いこなせるように本当にうまく作り込んでいる。
- 背景ぼかし切り替え → 絞りの変更
- 商品紹介モード → AFの顔認識OFF(&手ブレ補正OFF)
- コンデジなのにマイク端子搭載
- コンデジなのに高性能マイク搭載
- コンデジなのにバリアングル液晶
「カメラに詳しくなくても、自由自在に本格的に撮影できる」という意味で新たな客層にもリーチできる新しいカメラだ。カメラ業界に与えたインパクトは大きいだろう。
これだけの機能を詰め込みながら、技術や光学系を他製品から流用したり、外装に樹脂パーツを多用したりすることで価格も抑えているのも評価できる。
ZV-1を何に使いたかったか
もちろんエポックメイキングというだけでは購入には至らない。僕がどんな用途のためにZV-1を購入したのかを始めに話しておこうと思う。優先順位の高い順に
- ストロボを焚いて物撮り
- 1歳の子供の動画撮影
- お散歩スナップ
こんな感じ。
①に関しては、ホットシューを搭載しているため外部ストロボが利用可能だ。商品を左手に持ちながら右手でカメラを持って撮影、なんてこともある。そんな時は軽いコンデジの方が有利だ。コンデジでありながら外部ストロボで軽快な物撮りがZV-1なら可能だ。
②に関してもVLOGCAMと銘打っているだけあって動画撮影には強いはず。マイクが高性能なのも魅力だ。子供の動きもこれからどんどん活発になるのでSONYの高性能AFも心強い。
③に関しては、十分に小さいSIGMA fpも所有しているため想定される頻度は少ない。が、ポケットに忍ばせておいてサッと出してサッと撮るくらいできたらいいなあ、と。
でも、ZV-1を手放した理由
前述の3つの用途はZV-1で達成できる、が満足いくレベルではなかった。これが手放すことにした理由だ。具体的には以下。
- 物撮り → 換算50mm付近での最短撮影距離が長すぎる
- 動画撮影 → 手振れ補正がイマイチ
- スナップ → マニュアル撮影には絶望的に不向き
まあ③は買う前から分かっていたのでいいのだけれど、①と②はあまりに期待外れだった。
換算50mm前後の最短撮影距離が長い
一般的にはセンサーサイズが小さい方が最短撮影距離が短い。被写体に寄れるということだ。だから僕は当然ZV-1も寄れるだろうとたかを括っていた。
その予想は半分正解で半分間違いだった。たしかにワイド端ではかなり寄れるのだが、焦点距離を少し伸ばすやいなや途端に寄れなくなる。
物撮りは広角で撮ると不自然なパースがついてしまうので、標準〜中望遠で撮るのがセオリーだ。僕は片手で商品を手に取りながら撮影もするので、中望遠だと具合が悪い。だから標準画角を多用している。
・・・が、標準画角でZV-1は寄れないのだ。迷った挙げ句に合わない(最短撮影距離を超えているんだから当たり前だ)。レンズ交換式カメラならサクッとMFに切り替えて最短撮影距離で撮れるんだけれど、コンデジだとそれも億劫だ。
ちなみに換算50mm付近で最短撮影距離はこんな感じ。この例のように小さいものを撮るにはもう少し寄りたい。
そんなわけで僕の環境ではZV-1での物撮りは難しかった。ストロボは問題なく使えるだけに惜しい。
動画の手振れ補正もいまいち
レンズ交換式カメラはFUJIFILM X-Pro2、SIGMA fpと手ぶれ補正なしなものばかり使っていただけに過度な期待をしていたのかもしれない。手持ちで颯爽と動画を撮るZV-1のプロモーションビデオも僕の手ぶれ補正への期待値を上げた。
実際に使ってみると、うーん・・・。
「アクティブ」くらいの補正をクロップなしでやってくれれば最高なんだけれど。そもそも当時は動画メインではなかった初代RX100の設計がベースになっているから、このくらいが限界なのかもしれない。
あと別の話だけれど、SDカード内で動画と静止画が別フォルダに保存されるのもやや不満。動画と同じだけの管理ファイルが生成されるのもさらに不満だ。
SDカードを直接読むのではなく、専用ソフトでPCにインポートしろってことなんだろうけれど。他のカメラとワークフローを変えたくないんだよね。
マニュアル撮影には不向き
Canon PowerShot G7Xがあのサイズであの操作性を実現できていたのが奇跡だったのか、と思えるくらいにZV-1の操作性は(マニュアル撮影するには)悪い。
Canon PowerShot G7X焦点距離の段階的な切り替えができた。僕はレンズのダイヤルに割り当てていてワンクリックで24→28→35→50→・・・といった具合に。
一方でZV-1はというと焦点距離がバシッと決まらない。ズームのレバーを引きながら「あ!50mmだ」と思って止めても、まるで油圧かのようにじわっと動いて55mmくらいになってしまう。画面を見ながら丁度いい画角を決めるのなら問題ないが、頭の中にブライトフレームが浮かんでいて「この焦点距離で撮りたい!」と先に決まっている場合は歯痒い思いをすることになる。
不可能ではないんだけれど、ZV-1でスナップを撮りたいという気持ちにはならなかった。もちろんこれは僕に限ったで、ZV-1で素晴らしいスナップを撮影する方はもちろんいる。
今日のぐうの音
実害はないんだけれど、バリアングルの角度が微妙に180°に満たないのも、なんだかなあという感じ。
用途によっては最高のカメラだと思うし、素人がYouTubeに使うにも十分すぎるくらいの性能だと思う。冒頭にも話したとおりエポックメイキングなカメラであることは間違いない。
しかし僕の用途には合わなかった。残念ながら手放して、違うカメラに買い換えることにした。
Twitterにはすでに作例を上げているが、これまた最高だったので近いうちに紹介したい。
ちなみに僕のメインカメラはSIGMA fpです。
>SIGMA fp・レビュー|最強のフルサイズスナップシューター