最後の球面ズミクロン、Summicron-M 50mm F2
ズミクロン最後の非球面不使用レンズであり、Leicaの撒き餌レンズでもあるSummicron-M 50mm F2を購入して4ヶ月ほど使ってみたのでレビューしていく。
ちなみに2022年2月現在、Leicaから販売されている現行レンズで非球面レンズ不使用なのはSummarit-M F2.4/50mm, Summarit-M F2.4/75mm, Summarit-M F2.4/90mm, Macro-Elmar-M F4/90mm, Apo-Telelyt-M F3.4/135mmを加えた合計6本・・・意外とあるな
このレンズを一言で表すと「現行最高品質の撒き餌レンズ」だ。
(Leicaの撒き餌レンズはSummarit-M 50mm F2.4もあるだろう、という声も聞こえてきそうだが、撒き餌レンズの代名詞であるEF 50mm F1.8 STMと比較し開放F値や知名度の観点から当ブログはSummicronを推したい。)
気に入ったポイント
- (特にシルバーは)所有感最強
- 立体感もありつつ素直な描写
いまいちなポイント
- 固定できない組み込み式フード
- シルバーモデルは重い
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
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生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
工芸品の域に達した撒き餌レンズ。コスパは悪い。
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
よく写る50mm枠として購入
カメラを初めてから5年間で、メーカー数13、マウント数8種、1本あたり1万円から30万円まで合計30本以上とそこそこたくさんのレンズを使ってきて至った結論は、
「僕には35mmと50mmの単焦点があれば十分」
ということ。35mmも50mmもオールドレンズは所有しており、これで十分か?とも思える。・・・がレンズ沼の住人なら、そうは問屋が卸さない。リファレンスとして現代のレンズも持っておきたいよね。
視野の広さに相当するのは35mm、でも標準レンズは50mmというのが僕の感覚。肉眼の視野が50mmとよく言われるけれど、僕はそれがピンと来ていなくて。でも標準レンズは50mmと感じている。その理由は被写体の大きさだ。
「あ、面白い被写体!」と思ってスマホカメラ(26mm相当)を向けると「うーん、小さいなあ」と思った経験はないだろうか。そのギャップがなくなり、見たままの大きさで記録できるのが50mmだと思う。目で見たのと同じ大きさで撮れる、だから僕にとっての標準レンズは50mmなのだ。
余談だが、その後ほぼ等倍のファインダー倍率を持つLeica M3が50mm基準と知って妙に納得した。
どの組み合わせで35mmと50mmを買うか
35mmと50mmのどちらかをサードパーティ、もう一方をLeica純正で探すことにした。予算上の理由だ。以下の組み合わせで悩んだ。
- Apo-Lanthar 35mm & Summicron-M 50mm
Apo-Lantharで最短50mmまで寄れるのが強い。価格のバランスも良い。 - Summicron-M 35mm & Apo-Lanthar 50mm
35mmのSummicronがどの世代も高すぎる。 - Apo-Lanthar 35mm & Summarit-M 50mm
①を安価にしたパターン。F2.4でも気にならないけれど、結局Summicronが欲しくなる懸念あり - Summarit-M 35mm & Apo-Lanthar 50mm
どうしても35mmをLeica純正にしたい時の組み合わせ
この記事はSummicron-M 50mmのレビューなので①の組み合わせを購入したのは当然なんだけれど、その理由を深掘りする。もう少しお付き合いいただきたい。
50mmをLeica純正のSummicron-Mにした理由
さて、どの組み合わせを購入するか、という問題だが、僕は
- 35mmは記録を残す写真
- 50mmは記憶に残す写真
を撮るためのレンズという考えを持っている。そこで記憶に残す50mmに予算をかけ、Leica純正を購入することに。Summaritを買ってもどうせSummicronが気になることは経験上わかっていたので、初めからSummicronを選んだ。賢い。
ちなみに35mmの方は「Voigtlander Apo-Lanthar 35mm F2 Aspherical VM」を購入していて、レビュー記事も書いているのでよければ是非。
35mmのレビュー記事>Voigtlander Apo-Lanthar 35mm F2 Aspherical VMレビュー|最強の万能レンズ
前置きが長くなったが、Summicron-M 50mm F2 4thのレビューが続く。
真鍮の高品位な鏡胴
2022年1月に発売したLeica M11と同じようにSummicron-M 50mmもブラックよりシルバーの方が重い。ブラックはアルミでシルバーは真鍮のためだ。レンズはデジタルカメラより長く使えるものなので、耐久性という観点では真鍮の方が優れている(かも)。
僕はそんなことを考えたわけではなく、「シルバーのLeica M10-Rを使っている」という理由でシルバーをチョイス。
モノとしての所有間は撒き餌レンズを超えている。手に取るとずっしりしていて、いかにも高級品という感じ。ピントリングを往復させてグリスを馴染ませるだけでも悦にいることができる。35mmレンズと回転角は同じだけれど、50mmの方がレンズの伸び幅が大きくガラス玉の移動を感じられるのもまたよい。
絞りリングはやや重めで半段ごとにクリック感がある。8枚の絞りは円形にならないのはどうかな、と思うところではあるが。ちなみにF16では綺麗な円形になるけれど・・・。
フードは組み込み式でフードを探さなくても良いのはGood!Leicaレンズはフードだけでも安いレンズ買えるくらいなので。ただしこのフード、固定されない仕様はいただけない。ちょっと触れたら戻ってしまう。
Summicron-M 50mmの組み込みフードは保護機能を果たさないので、レンズキャップを逐一しない使い方なら、フィルターをつけたほうがいいかも。
1979年設計とは思えない素直な描写
僕のSummicron-M 50mmは第4世代と呼ばれていて、1994年発売だ。でも1979年発売の第3世代からレンズ構成は変わっていないというから驚き。もちろんコーティングが変わったり、硝材が変わったりはあると思うけれど。
そこだけ見れば、オールドレンズの範疇に含まれる。しかし写りは完全に現代レンズと言って良い。初代Summicron 50mmが当時の解像度の測定限界を越えていたという逸話はあまりに有名だけれど、第3世代もまあまあのオーパーツだったんじゃないかな。
作例を何枚か紹介する。ボディーはLeica M10-Rだ。
絞り開放でも滲みがなく、でもカリカリしすぎない気持ちのいい描写だ。
数段絞ると異様な立体感が生まれるのも面白い。
オールドレンズのように玉ボケの縁も発生しない。非常にスムースなボケ味と言っていいだろう。非球面レンズを使っていないのでボケに年輪のような模様がつくことももちろんない。
こういう感じの写真ってスマホじゃ撮れないよね。まあ逆にLeicaじゃなくても撮れるけれど。
普通のカメラメーカーならばセンサーに合わせてレンズを設計している。一方でM型デジタルLeicaはレンズに合わせてセンサーを設計しているそうだ。厳密にいえばセンサー前のマイクロレンズやカバーガラス、フィルターの設計だと思うけれど。
このSummicron-M 50mm F2もフィルム時代に設計されたレンズではあるものの、Leica M10-Rのセンサーがこれらレンズに最適化されているためか周辺まできっちり描写されている。
今日のぐうの音
重さとか、レンズフードの仕様とか、不満点はないことはないけれど、総じてお気に入りのレンズだ。
最後の球面ズミクロンということで、球面ズミクロン史上最高画質という捉え方もできる。そんなレンズを撒き餌価格で手に入れられるのだから、かなりお買い得ではないだろうか。
こうやって並べられるくらいキーボードを買い漁るようになるなんて思ってませんでした。
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